古い作品を下敷きに(脚色・翻案して)新しい作品が生まれた例を書き込んでください。挙げていただいた例はできる限り掲載し、またその他の機会にご紹介させていただきます。
ありふれたパリの街区を描いて人気のモーリス・ユトリロは、その絵のモチーフをほとんど当時発売されていた絵葉書写真から得たことがわかっている。
彼は一般的に想像されるように現地へ出向いてイーゼルやスケッチブックを構えて写生するのではなく、基本的にアトリエで、絵葉書を手本に描いた。
写真発明以来多くの画家が素描や構図の手本として写真を活用してきた。
モノクロ写真も写真機も非常に高価だった当時、ドガのように自分で撮影した写真を使った富裕層もあるが、そうでない画家は雑誌や絵葉書の写真をさかんに用いた。
その中でも作品の大半が市販の風景写真絵葉書を元にしたことが確認できるという点でユトリロは傑出している。
シェイクスピアの戯曲そのものもほとんどが先行する戯曲、物語、詩歌を下敷きに成立したことが確認されていますので、一例。
典拠:ウィキペディア(日本語版2007/06/03確認)。
【ロミオとジュリエット】
1476年ナポリのマスチオ・サレルニターノ作小説集の一話
物語の骨子が揃う(対立する2グループの男女が恋に落ち苦しむだけでなく、恋人たちを修道士が仲介し計略は失敗する)
舞台はシエナ、恋人達の名はマリオットとジアノッツァ。
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1530年ルイジ・ダ・ポルト作の物語
舞台はヴェローナ、ロメオとジウリエッタに。
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1554年マッテオ・バンデルロ作『小説集』の一話
パリス、乳母に相当する人物登場。
(ここまですべてイタリア語)
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(仏訳)
1559年ピエール・ブアトー
フランス語に訳し、物語全体に修辞や感傷的表現を増やす。
ジュリエットが仮死から目覚める前に、ロミオは死ぬことに。
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(英訳)
1567年
ウィリアム・ペインター作・散文「ロミオとジュリエッタ」
1562年アーサー・ブルック作・物語詩「ロミウスとジュリエットの悲しい物語」★
★シェイクスピアが直接種本にしたのはこちらとされる。
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1595年頃ウィリアム・シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」初演
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1957年アメリカでミュージカル「ウェストサイド物語」初演
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1961年ユナイテッドアーティスツ映画「ウェストサイド・ストーリー」公開
唐時代『才異記』(州長官の娘の幽霊の話)
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明時代『剪燈新話』「牡丹燈記」
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江戸時代『剪燈新話』の翻案流行
・上田秋成『雨月物語』「吉備津の釜」
・鶴屋南北「阿国御前化粧」
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三遊亭圓朝「怪談牡丹燈籠」
余談ですが…
歌舞伎「怪異談牡丹燈籠」(明治25年作)
映画「怪談牡丹燈籠」(1955東映)
など後作は多数。
初めて投稿します。
「古い作品を下敷きに(脚色・翻案して)新しい作品が生まれた例」とありますが、ここでいう『脚色』『翻案』は著作権(翻案権等の)侵害が成立するケースを念頭においた議論でなのでしょうか?
著作権法上自由に利用することができる「アイディア」の利用のケースをいれるとなると、著作権の保護期間を延長することの弊害が明らかになりません。
かえって、不明確な議論のまま、著作権保護期間延長へとミスリードする可能性がでてくると思います。
是非とも、公平な議論を行うために、この点を明らかにして意見を募集して頂きたいと思います。
森博嗣氏の著作に「STAR EGG 星の玉子さま」という絵本があります。特にそう言及はしてありませんが、「星の王子さま」がモチーフになっているんだろうなあ、と感じられる作品です。
個人的に好きだった、
NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」('07.2/17-3/24)
のエンディングテーマ曲は、「嵐が丘」(1847)の作者、Emily Brontë(1818%7E48)が、1841年(23歳)に書いた詩とのことです。
http://www.nhk.or.jp/hagetaka/theme.html
『Richs I hold in light esteem』
(富は問題にならぬ)
メロディをつけたのは音楽家佐藤直紀氏。
ヴォーカルは、tomo the tomo。
当番組に関連したブログを読んでいると、CD化の要望が多いです。
私もCD化を強く望んでいます。
こんにちは、芸術・文化政策センター(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)の太下(おおした)です。
「創造のサイクル」のうち、特に、「著作権保護期間が満了して、パブリックドメイン化したことによって、再創造が可能となった事例」に関心を持っています。
実は先週末、自宅の書棚を漁っていて、パロディ本「シャーロック・ホームズの災難」(エラリイ・クィーン編)という文庫本をあらためて読み返しました。
同書の「訳者あとがき」によると、同書はホームズ・パロディの古典的傑作であるにもかかわず、「このアンソロジーはドイルの息子のアドリアン・コナン・ドイルの反対で絶版となったから、稀覯本になってしまい、アメリカの図書館でも貴重図書扱いになっている」とのことです。
日本では著作権保護期間が満了してるようで(すいません。未確認です)、幸いにしてこの素晴らしい作品を気軽に楽しむことで出来るようです。
この「創造のサイクル」において、こうした事例をたくさん集めることができれば素晴らしいと思いますので、みなさんどうぞよろしくお願いいたします。
皆さん、はじめまして。田中辰雄(慶応大学経済学部、フォーラム発起人の一人)です。
保護期間の延長の経済効果を調査しており、その調査の一環として創造のサイクルの事例をまとめて資料の形にしたいと思っております。
そこで、この掲示板をお借りして、事例を集める事を考え、世話人である福井さん津田さんにお願いしたところ、承諾を得ました。ここで出されている事例をそのまま眠らせてしまうことはもったいないことで、まとめてレポートのような形にしておけば、参照資料として使うことができます。
これまでに寄せられた事例に加え、こういう事例がある、などの情報があれば、ぜひ、この掲示板に寄せてください。私と、同じく発起人である太下義之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)で、整理して行きたいと思っております。
皆さん、ご協力をお願いします。
歴史大作「風雲児たち」のみなもと太郎氏が、「ドン・キホーテ」を元にしたミュージカル映画「ラ・マンチャの男」を未来を舞台にマンガ化したもの。
現在は「ハムレット みなもと太郎の世界名作劇場」に収録されていますが、みなもと氏ご自身が作られた同人誌版には、本作を描くまでのエピソードが書かれています。今手元に無いので不正確ですが、「ラ・マンチャの男」のマンガ化の権利処理を行う手間が余りにも膨大であるために断念して、「ラ・マンチャの男」とは似ても似つかない作品にして、なおかつ「ラ・マンチャの男」の感動を再現してやる、それでも訴えてきたらその時は全て自分が責任を取る、と言って出版社を説得して描いた、というような話だったと記憶しています。
日本文学は、中国文学を基にして作られた名作がたくさんありますよね。
「唐人説薈」、「古今説海」→中島敦「山月記」
蘇軾「春夜」→武島又次郎「花」
楊巨源「折楊柳」→室鳩巣「なれてふく名残や惜しき青柳の手折りし枝をしたふ春風」
杜朴「江南春」→
・芭蕉「春なれや水村山郭酒旗の風」
・嵐雪「鯊つるや水村山郭酒旗の風」
白居易「長恨歌」を引く文学作品は沢山あります。
・源氏物語「桐壺」
・枕草子
・更科日記
・大鏡
・平家物語
・岡本綺堂「長恨歌」
・菊池寛「玄宗の心持」
・井上靖「楊貴妃伝」etc.
名作に着想を得て名作を著すことは遥か昔から行われてきたのだと思います。
松本零士氏の『ニーベルングの指輪』はワーグナーの歌劇から想をとったものではないでしょうか。
ただいまどちらも手元にないのでどなたかの確認をお願いしたいところです。
松本氏のシンポジウムでの主張によると
「古典と現代、近代の作品は分けて扱うべきだ」ということで、この根拠は全く示されていないことが気になっています。我田引水というものではないでしょうか。
※blogのURLを記入しないままでしたので、文章を追加し、改めて投稿いたします。
そもそも松本零士氏の『ニーベルングの指輪』はワグナーの楽劇から想をとったものではないでしょうか。
両方とも手元にないのでどなたか確認をお願いしたいと思います。
『ミス・サイゴン』の下敷きとしてプッチーニのオペラ『マダム・バタフライ』があるという事は、公演パンフレットの中などでも触れられております。
ライマン・フランク・ボームの『オズの魔法使い』を元に、グレゴリー・マグワイヤが『WICKED』という小説を書きました。それがミュージカル化され、現在USJにてハイライト版が上演されております。
『オズの魔法使い』からは他にも、『ウィズ』というミュージカルも作られました。
アメリカの教育番組『セサミ・ストリート』をモデルにした、マペットと俳優が一緒に舞台の上で歌い踊る大人向けのきわどい内容のミュージカル『アヴェニューQ』が作られております。
ミュージカル『蜘蛛女のキス』の原作である同名小説を読んだ武満徹氏が、作品のオペラ化を計画したという話もあります。
『ウエストサイド物語』作曲者バーンスタインは、ラストナンバーである『Somewhere』の歌い出し部分のメロディは、ベートーベンの楽曲に影響を受けたと語ったそうです。
(どの楽曲だったかを失念してしまいました、申し訳ありません)
以上、思い出せる範囲で挙げてみました。
彼のタイムマシンや宇宙戦争や透明人間が無ければ、SF界の発展は全然違っていた筈で、全ての時間旅行物語はその土台にあります。1946年に死んでいますから、本当なら、現代SFの殆どの設定は全て著作権侵害になる筈ですが、そういう話を聞かない所を見ると、彼の遺族が肝要なのでしょうか(その当たりは知りませんが)。
有名な話ですが出ていないようなので。
ダシール・ハメットの小説「血の収穫」(1929)又は「町の名はコークスクルー」
→黒澤明「用心棒」(1961)
黒澤明「用心棒」(1961)
→セルジオ・レオーネ「荒野の用心棒」(1964)
黒澤明「用心棒」(1961)
→ウォルター・ヒル 「ラストマン・スタンディング」(1996)
ピノキオをモチーフにしたと思える作品に次のものがあります。
・手塚治虫「鉄腕アトム」
・石森章太郎「人造人間キカイダー」
・バリントン・J・ベイリー「ロボットの魂」
・スティーブン・スピルバーグ「AI」
・TVアニメ「樫の木モック」
・TVアニメ「ピコリーノの冒険」
アニメの「名探偵ホームズ」は、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」をもとにして制作されている。制作開始当初は、著作権が有効なことに気付かず(戦時加算を計算にいれなかったため)、有効であることに気付きお蔵入りとなった。「風の谷のナウシカ」の併映として、公開された時には、人物名を多少変更することと終わりに「この映画はコナン・ドイルの著作物に基づくものではありません」というテロップを入れ公開した。テレビ放映時には、著作権関係をクリアしたのか、人物名の変更などはなくなっている。
*リスト作曲「ハンガリー狂詩曲」に影響を受けて
・サラサーテ作「ツィゴイネルワイゼン」
・ヴィットーリオ・モンティ作「チャールダーシュ」
などの名曲が生まれている。
また、同じくリスト作曲「ハンガリー狂詩曲」についてだが、映画『マイ・フェア・レディ』の中で、登場人物のハンガリー人言語学者ゾルタン・カパーシーをヒギンズ教授たちが揶揄するシーン(「You Did It!」)で、この曲がコミカルにアレンジされ部分的に導入されている(『マイ・フェア・レディ』の音楽担当はフレデリック・ロウ)。
*映画『砂の器』の「宿命」(菅野光亮作曲)には、ラフマニノフに影響を受けていると思われるフレーズが多数出てくる。
さらに、TVドラマ版『砂の器』で音楽を担当した千住明作曲の「宿命」は、菅野氏のテイストを損なうことなく後世に伝えるべく(さらに千住氏のテイストを加味した上で)作られたものだ、と千住氏本人によりコメントされている。
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ここまで壮大な例とまではいかずとも、現在活躍中のアーティストたちの作品の中には、ジャンルを問わず、またその枠を越えて、明らかに
“彼らが幼少・若年の頃聴いて影響を受けたのであろう”
と容易に推察できる先人のテイストを用いて作られた(と思われる)ものが数え切れないほどある。
我々ファンというのは、そうした音楽やアーティストたちの歴史を遡り音楽の幅を広げるのも大きな楽しみだと思っているし、ファンがそうすることを願うコメントを(ライヴ中のMC、或いは公式サイトなどで)常に発しているアーティストもたくさん居る。
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