著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム - thinkcopyright.org


フォーラムの公開シンポジウム

公開トークイベント vol.1 来場者アンケート結果

集計結果(有効回答数:43通)

著作権保護期間の延長に
賛成 6名(14.3%)
保留 12名(28.6%)
反対 24名(57.1%)



アンケートコメントより抜粋

■延長すべきを選んだ理由

・日本社会の著作物知識の思想が、西欧諸国に比べて大変遅れている(未成熟という意味)ことがわかったように思います。論議はまさにこれから始まるのだと思いますので、有意義なイベントでした。

・過去の名作の著作権から生じる収益は、出版社、音楽出版者等によって、新たな創作に再投下され、新人にチャンスを与える。”タダ・無料”の土壌に豊かな文化は育たない。

・わが国の保護期間が欧米諸国と比べて短いということは、その分、わが国の文化の価値を低く評価していることに他ならない。わが国の文化の価値を、国際レベルにまで高めるべき。

・国際標準に合わせるべき。

・現実問題として、諸外国に合わせなければ不都合なことが起こる。

■保留を選んだ理由

・ミクロ・マクロ連関の不明確さ、客観化しにくい一般理論の比較の困難さ、制度・施策の目的と帰結の混乱など、演繹的手法ないし解析モデルを用いた議論の限界が顕著に表れていたように思う。文化の発展を生物の進化とのアナロジーとしてシミュレーションするなど、新しい科学的手法が必要なのではないだろうか。

・国際標準にすることについて、私は理解できるのだけど、欧米化に反対している人の理由があまりわからない。

・コンテンツ等著作権の保護期間の延長は、創造機会にどの程度effectiveなのか、あるいは流通機会にどの程度effectiveなのか、経済的実証可能性を追求しつつ、まずはその因果性を検証することを望みたい。利益相反する立場での論点・集約は是々非々あり、criticalな科学的論拠の提示を通しての議論を望む。

・延長論にはあまり説得力を感じませんでしたが、慎重論としては著作者人権者の発見が困難になるという理由が主でやや弱いように思います。ただ、どちらの立場の方からも、どのような仕組みが著作物の流通を促進するか、自由な利用を促進するかについての提案があり、その点がとても重要であると感じました。

・人格権と財産権を分けて考えてほしい。

・もう少し論点を出しつくせば、より良い考えに近づけそうだから。

・著作権全体を考えて結論を出すべき。単なる世界標準という論理はおかしい。20年延長で得をしたのは個人ではなく企業であった。日本人が自分の頭で考えるべき。

・クリエイター個人の著作権に対する考えが多種多様なため、もう少し柔軟に対応する必要がありそうなので。

・50か70かといわれれば70年。世界標準なので。ただし、日本発の発想(林先生)もあるだろう。

・林先生の”何が現代・デジタル時代にとって最良の法体制なのか”というご意見にいたく動かされました。今回は著作者の方のお話の方がメインでしたので、消費・流通の側面からの検討もおおいにしていただきたいと思います。

・端的に双方の議論をさらに聞きたいと考えているためです。

■延長に反対を選んだ理由

・欧米に合わせるのではなく、日本式日本発で欧米式を変えていく努力が必要でしょう。とはいえ、会場でも議論されたとおり、システマティックな流通管理は絶対必要です。

・この問題を文化・芸術の「公・私」のバランスの問題と考えたとしても、賛成派は決して「私」の領域を全否定しているわけではない(現に、そのために著作権制度というものがあるのだと思う。やはり50年→70年への延長、そしてその先に思える”無限”の延長)は、「私」の領域の肥大化の域に踏み込んでいるのではないかと思えてならない。

・まずは現状の矛盾や不条理な問題を解決することが大切で、延長が急務とは議論を聞いても思えなかった。

・死後50年は、十分な保護期間と考えられます。文化発展のために、P.Dから新たに著作物を制作して世に出していくことの方が重要だと思います。

・財産権的な著作権と著作人格権は区別して議論されるべき。つまり、著作人格権は死後50年どころか100年でも守られるべき。しかし、死後50年から70年にして、その使用料をもらうのはいったい誰?って感じです。権利保障の話をして、多くの場合、かえって作品が忘れられる(死蔵)という結果を招くのは問題です。

・コンテンツビジネスの拡大のため。

・一括許諾制度がそう簡単に実現するとは思えないから。登録システムや少額課金システムの掛け声はもう何年も続いている。

・文化は広く開放すべき。現行の50年でも長すぎる。著作者も文化の中で生き、文化のもとで著作活動をしているのであり、まったくの個人の力で行っているのではない。

・2次利用を前提とした音楽活動をしている。佐野先生のおっしゃるとおり、きゅうくつさが続くのは好ましくないと考える(マス文化と草の根文化の対立?という気がしてきました)。

・世界標準(70年)に合わせるのが正しいという論理が理解できません。そもそも70年をいいと思ってはいないなら、日本から「短縮しよう」という発信をしてもいいのでは。「巨人の肩に乗っている」ことを自覚している人は反対で、画家や写真家のようにオリジナルだと思っている人たちは賛成みたいです。とにかく、「今」生きているクリエイターに還元できる仕組みが必要では。翻訳権10年留保は、いいアイデアだったと思います。これを戻して世界に広めては?

・基本的に前回と同じ。ただ、瀬尾氏の「年月を経て価値を生む写真」という意見は、新知見であった。しかし、三田氏や瀬尾氏の訴えるシステムは、方式主義そのものではないのか? 瀬尾氏は実際の管理の現場において、現在の死後50年でも、「見ず知らずの親戚の著作権を継承したくない」という人が出ていることを考えるべきだろう。20年の延長は明白に、管理コスト増大を招く。現在の著作権は「推定存在」であり、消滅が明確でない限り、存続しているとして扱わなければならない。こえは著作物の数が限られているときには機能するが、現代のように無数の著作物が横溢する時代には、機能不全に陥ってしまう。「推定不在」「存在明確化」の制度が今後は必要とされるのではないか?

・利用者の立場から見て、これ以上権利を強化すると、さまざまな障害が大きくなる。著作物は利用されてこそ、その存在価値があるので、利用の制限が増えるのは文化にとってもマイナス。

・延長すべき適切な理由が見受けられないため。死後50年を70年にしても、社会的にも作家個人としても何が得られるのかわからない。

・本当に流通させたいのであれば50年にしても、もっと短くしたい人は選べたり、クリエイティブコモンズなどの方向がよいと思う。70年に延長したら、もうその先には”延ばす道”しかない。

・統一的なシステムが必要、というお話がありましたが、(1)英米ですら保護期間に差異がある、(2)米国には人格権がない(はず)という2点を無視して議論を進めることには、少し疑問が残ります。

・システム構築にどのくらいかかるのか。金銭面からのアプローチを考えると、デメリットの方が多いと思う。

・著作権はクリエイター個人の権利であり、存命中が重要である。死後50年でも長すぎると思うので、延長には反対。

・前から反対。今後もおそらく変わらない。

・デメリットは明確だが、メリットが不明確。比較考量すると、反対せざるをえない。

・現状で単に延長するのは、ごく少数の経済的価値ある作品のために、大多数の作品(文化遺産)の利用を妨げる愚考であり、創作者ではなく、それに群がる我利我利亡者のみを喜ばせるものです。延長するなら(1)じはつてきに登録し、(2)金を払った限られた人に対象を限るべきで、その仕組み抜きに単に延長するのは文化を滅ぼすものです。

・死後50年や生前まで含めた著作物の簡便な利用を実現する一括許諾システムは、大変に魅力的です。これが本当にできれば70年でも100年でもかまわない。しかし、このポイントは網羅性と、このシステムに乗らない著作物の利用を、三田氏が話されるような裁定制度など(アーカイブに限定しない)で、利用自由化することだと思います。これを伴わない中途半端な許諾システムでは意味がない。もし、先に70年に延長し、しかも出来たシステムが中途半端だったとしたら、詐欺に等しい。本来的な解決は、林先生のおっしゃる登録制の導入が不可欠だと思います。利用者の実感としては、佐野先生のお話が一番しっくりきました。福井先生の質問で、かなりいい加減な構想であるらしいことが露になった。

■今後、話を聞いてみたい人

・産業界(角川等の方、クリエイターで”下請け”的立場にある人々を代表できる方、クリエイティブ・コモンズジャパンや八田真行さんやウィキペディア等フリーカルチャーの方

・自分が製作者であると同時に利用者であるという前提で話ができる人

・佐野眞一さんパート2vs松本零二先生

・劇作・セル販売・流通等にかかわっておられる方

・夏目房之介さん

・佐野さん

・ミュージシャンの人

・中国の現状

・横山久芳(学習院大学助教授)

・名和小太郎先生

■その他意見&感想

・メモがとりにくい。机が付されている席を用意してほしい。

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